最高裁判所第一小法廷 昭和27年(マ)108号 判決
原告 中原義昭
被告 国
一、主 文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事実及理由
本件訴状には「告訴、告発に対する、不起訴処分は憲法に適応しない。司法処分の取消を求む」と記載してあり、更に申立の趣旨として、
「(1) 広島県佐伯郡五日市町警察署司法主任巡査部長中山頼雄同署書記船岡郭司に対しなしたる業務横領再告発事件を広島地方検察庁合志検事が不起訴処分にしたるは違憲である。
記録には事更に私を誹謗した報告書を提出していますが、事実無根な自己保身上卑劣な偽造公文書であります。
(2) 呉市阿賀町字新畑
長尾病院長 長尾正二
同病院専属医師早川伴和に対しなしたる、不法監禁告訴事件を広島地方検察庁呉支部河合検事が不起訴処分にしたるは違憲である。
(3) 広島県賀茂郡竹原町字地蔵町伊藤嘉弘、同郡同町野島正春、同町字向島武田吉成に対しなしたる名誉毀損告訴事件を竹原区検察庁竹内副検事が不起訴処分にしたるは違憲である。
当初事件発生後関係自治警察署に再参、捜査方を懇願したるも鋭意捜査に着手しなかつた及各々検察官は自己の公益の代表者である。信念稀薄にして憲法の条規をも遵守せず又、個人の基本的人権をも保証せず一方的な捜査のみにて不起訴処分としたるものなり。
それが為め独自の捜査に依り物的、人的証拠よりして違法行為たることが、顕著であります。
各々の事件は相関連性のあるものにして、一部公務員の共同謀議に依り、発生しています。
法的にも人道的にも許容出来得ない反社会的行為でありますと同時に事件の早期完結を念願して直接貴所に提起した次第であります」
と記載してあり、右訴状の記載及び原告審訊の結果によれば、原告は本訴を提起して検察官のした不起訴処分の取消を求めるものであること明白である。しかしながら、検察官のした不起訴処分に対する民事訴訟乃至行政訴訟の提起は、わが国法上ゆるされていないことは当裁判所大法廷の判例とするところであるから(昭和二十七年十二月二十四日最高裁判所大法廷判決、判例集六巻一一号一三〇頁参照)本訴は不適法な訴といわなければならない。そしてその欠缺は補正することができない場合であるから、民訴二〇二条によりこれを却下すべきものとし、訴訟費用の負担について民訴八九条を適用し、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判官 斎藤悠輔 真野毅 岩松三郎 入江俊郎)